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Vol.002「認知症で閉じた“とびら”を開く」

小方希公代さんと管 偉辰

リリムジカと一緒に仕事をしてくださっている方々にお話を伺うカフェ リリムジカ。前回は町田市清風園施設長の安田修一さんにお話を伺いました。今回は清風園内にあるグループホーム「丘の家清風」の小方希公代(おがたきくよ)さんにお話を伺います。「丘の家清風」では月に2回、ご利用者と一緒に音楽療法を行っています。小方さんはこの音楽療法でグループホーム側のまとめ役をなさっています。小方さんに、リリムジカと一緒に音楽療法を行っての感想、仕事への想いを伺いました。

【管】まずは、小方さんがどのようにして介護の仕事を始められたのかを教えてください。

私が介護の仕事を志した背景には、私がおばあちゃん子だったことがあります。祖母とは小さいころからずっと一緒。夜は布団を並べて一緒に寝ていまし た。でも、高校生のときに祖母が亡くなって。最期は病院でした。息を引き取るとき、私は悲しすぎてそばにいられなかった。そのとき私が居たのは病院の駐車場。車の中で、ずっと泣いていました。祖母を看取れなかった。その悔いが、今につながっています。

賛育会(清風園の母体となる法人)には2003年4月に入職しました。最初の配属は特養。お食事、排泄、お風呂・・・次々と介助をしながら、あわただしく時間が過ぎていました。 目の前の仕事をこなすばかりで、ご利用者に呼び止められても応えられなかった。これが私のやりたかった仕事なのかな。もっと他にやり方があるんじゃないかな。そう思い始めた折、グループホームに異動となりました。グループホームで働き始めたのは2004年9月。最初は衝撃でした。特養で行っていた「仕事」 がほとんどありません。自分は何をすればよいのだろう?発想の違いに驚かされました。それでも仕事をとおして、どうすればご利用者が自然に動く環境をつくれるかが、段々見えてきました。音楽療法の話が出たのは、2009年3月。自分なりに手ごたえを感じつつあるころでした。

● 初めて音楽療法のことを聞いたとき、どう思いましたか?

私は小さいころからピアノを習っていました。高校のときは吹奏楽部。音楽好きの私ですから、グループホームでの音楽は音楽療法が始まる前から行っていました。私が鍵盤を弾いて、ご利用者と一緒に歌う。それはそれで充実した時間でした。しかし、たくさん音楽をやりたいと思っても、通常の業務のほかにもいろいろな仕事があります。他のスタッフに、と思っても得手不得手があるため、定期的な実施は難しいものでした。そういう状況でしたので、最初音楽療法の話を聞いたとき、直感的に 「やってみたいな」と思いました。

● お試 しセッション(プログラム)を一緒にやって、感じたことを教えてください。

定期的な音楽療法を開始する前に、まずはお試しのセッションをやることになりました。お試しセッションの前にも音楽療法士が現場に来て、一人の人間としてご利用者とコミュニケーションをとる。これがリリムジカさんの進め方ですよね。このときは柴田さんが来てくださりました。初めて柴田さんと会ったとき、私は「この人なら」と思いました。ご利用者との接し方を見て「人そのものが好きなのだろうな」と感じました。また、音楽療法への想いもとてもしっかりしていました。「柴田さんならグループホームの職員になってもいいな」と思ったくらいです。

柴田さんに一度グループホームにお越しいただいた後、お試しセッションを行いました。正直、セッション前にはいろいろな心配がありました。みなさん集まってくださるだろうか。途中で席を立つ人がいたらどうしよう。それが、いざお試しセッション。参加されないだろうと予想していた方も参加されました。 さらにみなさん45分間、ずっと集中されました。他にも認知症が進んでいると思った方が口ずさんだり。「この方はこんな歌声なんだ!」という発見もありま した。自分がやりたいと思っていた音楽がこんなにやれた。お試しセッションを経て、音楽療法を続けたいなと思いました。

ポジティブな変化を一緒に喜べるところが、音楽療法をやっていて楽しいところです。

●  どんなときに、音楽療法をやっていて楽しいと思いますか?

リリムジカさんの音楽療法の特徴は、振り返りですよね。毎回セッション終了後、参加された方お一人お一人について、柴田さんと一緒に振り返りを行っています。「今日はTさん、3曲も歌えた!」そんなことを話します。ちょうど昨日セッションがありましたが、その中でSさんという方がオーシャンドラムを持って口を大きくあけ、笑っていました。定期的な音楽療法が始まる前、この方はこんなに笑ったことがあったかしら?振り返りでは、こういうご利用者の様子を一つ一つひろっていきます。

振り返りでは音楽療法以外の時間についての様子も話します。「この方最近鼻歌が増えたんです。」「Sさん、前々回に瀬戸の花嫁を歌ってから、ここ 一ヶ月くらいずっと気分よく歌っているんですよ。」ポジティブな変化を一緒に喜べるところが、音楽療法をやっていて楽しいところです。普段は普段でご利用者のことをみていますが、音楽療法と振り返りの時間があると、また違った角度からご利用者の姿がみえてきます。毎回の楽しさを日常生活にも結びつけようとしている。そのスタンスが、リリムジカさんの音楽療法で気に入っているところです。

● 音楽療法を手段として、どんな仕事を行っていきたいですか?

私の仕事は、ご家族に安心してもらうことから始まります。グループホームの利用を検討されるご家族は、切羽詰っておいでになる場合があります。認知症になった親にイライラしてしまう。危なくて家事をやらせられない。しかし、グループホームに申し込むにも引け目を感じる。そんなとき、私はご本人がグループホームに入った後、ご家族との関係が程よい距離感になった事例をお話します。「ご家族では難しいことを、私たちが代わりにお助けします。」という具合です。
入居が決まったら、次の仕事はご利用者の”とびら”を開くこと。認知症になると、多くの場合いろいろなことができなくなっていきます。でも、どうやったら閉まりつつある”とびら”が自然に開いていくか。そこが私たちの腕の見せ所であり、私たちを信じてくださったご家族に安心していただくために必要なことです。音楽療法はこの営みを行うための、一つの大事な手段です。おばあちゃん子だった私です。これからも、少しでも多くご利用者の”とびら”を開いていける仕事ができたらと思っています。

※表示されている氏名、役職はインタビュー当時のものです。

(2010年08月04日)

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