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Vol.005「カウンセリングの経験もとにご利用者の活力剤をめざす」

グレイスホーム 清水祐壱さん

東京都足立区の住宅街の中にある特別養護老人ホーム、グレイスホーム。こちらでは2010年の12月からご利用者への音楽療法を実施しています。今回お話を伺う清水祐壱さんはグレイスホームで私たちと一緒に音楽療法の時間をつくっている職員の1人。

「音楽療法セッション後の振り返り、清水さんの丁寧な語り口がとても印象的です。過去のお仕事が関係していると思います。」グレイスホームでの音楽療法セッションを担当する鈴木美香子から、事前にこんなことを聞いていました。清水さんの過去の仕事とは?それが今どのように活きているのか?インタビューしてきました。

【管】 清水さんはどのような経緯で音楽療法の担当者になったのですか?

私は2010年の4月にグレイスホームに入職しました。音楽療法の開始は同じ年の12月。入職して1年経たずに音楽療法の担当になったことになります。私が臨床心理カウンセラーの資格を取得し、いろいろなセラピーに関心を持っていることを周囲に伝えていたからだと思います。音楽療法を導入する話が出たとき、フロアリーダーの野島が私の気持ちを汲んで担当に推してくれました。

● なるほど、臨床心理カウンセラーという資格をお持ちなのですね。それは、どんな資格なのでしょうか?

私たちは生きていて、いつも順調とは限りません。例えば家族の不和があったり、仕事で悩みがあったり。これらの問題が良くない方向に進むと、家から出られなくなるとか、自傷行為をする、というケースに陥る場合があります。臨床心理カウンセラーは、そのような状態に陥った人について、何がその原因かを診断し、コミュニケーションを取りながら自己変容の手助けをします。

● この資格を取ったのには、何かきっかけがあったのですか?

音楽療法セッション中の清水祐壱さん

音楽療法セッション中の清水さん

私はパソコンが好きで、大学は情報系の学校でした。最初に就職したのも情報系の会社です。私はネットワークエンジニアとしてほとんど毎日営業に同行。会社の業績も伸びていきました。

しかし、あるとき社内のコミュニケーションが希薄なことに気がつきました。何でもメール。隣の人とのやり取りもメール。大事なことまで全てメール。このような働き方って、自分にとって幸せなのだろうか。もっと人の手触りを感じられる仕事がしたい。そう感じました。

振り返ってみれば、私は学生時代、アニメーションをつくっていました。ストーリー、キャラクターの設定、作画。すべて自分で行いました。創作は、自分の経験から生まれます。ですから、完成したアニメーションは自分の分身と言えます。

人の手触りを感じられる仕事とは何だろう?ネットワークエンジニアの仕事をしながら考えたとき、もっと人を知りたいと思いました。それでカウンセリングに興味を持ち、資格を取りました。

● 資格を取った後は、すぐにカウンセラーになったのですか?

資格を取った後の最初の仕事は、子どものカウンセリングです。家族の人間関係に課題がある子どもの親から依頼を受け、定期的に家庭訪問をします。子どもの部屋に入っておしゃべりをしたり、親御さんの話を聴いたり。毎週1回2時間ずつ、全部で20人くらいを見ていました。

● 子どものカウンセリング。このような仕事があるのですね。訪問によって、どのような成果が出たのでしょうか?

印象深いのは当時18歳だった男の子のケースです。仮にA君としましょう。A君のお母様はうつ病でした。彼は母を助けたい。しかし、どうしたら良いかわからない。母のことのみならず、自分の人生もどうしたらよいか。思い悩んだ末、彼は言葉が出なくなっていました。

私がA君と初めて会ったとき、やはり彼は言葉を発しませんでした。そこで私は2時間、ずっと話し続けました。「君が話したいときに話せばいいよ」という意思表示です。カウンセリングを受ける人に心理的な負担をかけない。何度目かの訪問時には、一緒に散歩に出かけたこともあります。

こんな風にしてA君と関わってから半年たったあるとき、彼は「実家を出て一人暮らしがしたい」と自分の気持ちを話してくれました。

カウンセリングの仕事をして気がついたことですが、子ども問題の背景には、親や祖父母の問題があります。たとえば離婚や精神状態。子どもにとって、世界の大半は家庭です。家庭に問題が起きると、子どもは最初その問題に関わろうとします。しかし親は気をつかって子どもを蚊帳の外にする。親に訴えても自分の気持ちが届かない。このようなことが続くと子どもは自分の存在意義が感じられなくなり、無気力になります。A君のような子たちを少しでも助けられたこと。良い経験でした。

● この仕事のあと、清水さんはグレイスホームに入職しますよね。高齢者の仕事をするにあたって、どのような経緯があったのでしょうか?

音楽療法セッションの振り返り

音楽療法セッションの振り返り

私は資格を取るための学校に通っていたころから、ぼんやりと将来は高齢者のカウンセリングがしたいと考えていました。理由は二つ。私自身がおばあちゃん子だったことと、認知症の予防にカウンセリングが有効だという記事を読んだことです。これから高齢者の割合はますます増える。カウンセリングで認知症を予防することができたら、その仕事には意義があると考えました。

先にお話した子どものカウンセリングの仕事は2年でひと段落しました。自分なりに経験も積んだし、そろそろ以前から思っていた高齢者に関わる仕事をしよう。そう考えてグレイスホームの面接を受けました。

● 特別養護老人ホームでの仕事をして、印象的だったことはありますか?

食事介助を初めてやったときは怖かったです。事故をおこしてはならないという責任があります。とはいえ食事は生活の中で大切な時間。どうやったら楽しんで召し上がっていただけるか、考えながら取り組みました。ある女性のご利用者との経験が印象的です。B様としましょう。B様は気分の変化が多い方で、食事もなかなか召し上がりません。B様の食事介助をどのように進めるかが私たちの課題でした。私は、B様がお話好きなことに着目しました。お話されている間、B様は楽しそうにされます。食事介助中、私は相槌を打ちながら話を聞きます。お話がひと段落してから、一口。また一口。すると、気分よく召し上がってくださりました。フロアリーダーが「清水君が食事介助をすると、B様は食べてくれるね。」と声をかけてくれました。嬉しかったです。

● なるほど。清水さんの嬉しさ、伝わってきます。さて、音楽療法が始まったのはグレイスホームさんでの仕事を初めて7カ月ほどたった後ですね。音楽療法について、最初はどのような印象をお持ちでしたか?

「音楽療法の担当になってほしい」と言われたのは2010年の12月。そのときすぐに「やってみたい」と思いました。私が担当している方には音楽好きな方がたくさんいらっしゃぃます。音楽療法を行ったら、ご利用者の方々がどのような反応をするのだろう。そんな期待感がありました。

● そうでしたか。期待をもって取り組んでくださったこと、私も嬉しいです。それでは逆に、音楽療法を始めるにあたって不安な点はありましたか?

そうですね。強いて言うならば、音楽の刺激が強すぎて身体に影響が出るのでは、という心配がありました。カウンセリングをしていたとき、感情があふれて涙を流し、過呼吸になった方がいました。音楽は感情をゆさぶります。それがきっかけで過呼吸や呼吸困難になったりしないかな、という心配はありました。

音楽療法は初めてのことです。意義や目的についてじっくり打ち合わせられたらいいな、と思っていました。ただ、実際には5分程度の打ち合わせを1回行っただけでした。始まる前のリスク管理と、職員と音楽療法士さんの情報共有があると、スムーズに始められると思います。

認知症が進んだC様。音楽療法に参加し続けて半年、先日初めてばちを握り、リズムを意識して太鼓を叩かれました。音楽が自己表現のツールになっていると感じた瞬間です。

● 音楽療法を開始するまでの段取り、そのとおりですね。施設のケアの方向性、職員さんの考え、音楽療法士の経験や特長といった情報を共有した上で、施設での音楽療法の方向性や目的を設定する。これからは事前の情報共有も一層進めていきます。

そうですね。音楽療法の目的や意義について、担当している私も最初は不明瞭な点がありました。それでも、やっているうちにその意義が段々わかってきました。大きいと感じるのは「外部の人が来ることによる刺激」です。音楽療法が始まる前、私はご利用者をお部屋まで迎えに行きます。ご利用者に「今日は音楽の人が来ますよ」と声をかけると「そうなんですか!」と嬉しそうにされます。認知症が進んだご利用者が、音楽療法が終わったあと「また来てね」と鈴木さんに声をかけているシーンもよく見かけます。

それから、音楽が自己表現のツールになっているという点にも意義を感じます。認知症が進んだC様というご利用者がいます。C様は、私たちにとってわかりやすい形でご自身の気持ちを表現することはほとんどありません。そんなC様ですが、音楽療法に参加し続けて約半年が経った先日のセッションで、はじめてバチを持ちリズムを意識して太鼓を叩かれました。曲の歌詞にあわせようと口を動かして声も出されました。バチや声が、自分を表現するツールになっていました。

● 音楽療法をやっていてそういうことがあると、嬉しいですね。最後に、清水さんはこれからどのような人物になっていきたいですか?

グレイスホームを利用されている方の中には、重度の方もいらっしゃいます。そのような方も含めて、誰もが自分の意志や望みを持ち、表現できる状態が実現できたらいいなと考えます。私はそのような方々の活力剤になれたらと思います。

清水さん、今日はお話ありがとうございました!

※表示されている氏名、役職はインタビュー当時のものです。

(2011年09月14日)

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