音楽を通じた場づくり(ミュージックファシリテーション)とは
ミュージックファシリテーションについて
私たちは「人が最期まで自分らしく生きられる社会をつくる」という存在目的のもと、介護施設や高齢者向け住宅等で音楽を使った場づくりを行っています。 介護現場で近年重視されている「自立支援」を「要介護度や認知症の有無にかかわらずその人らしい生活を考え実現することの手助け」と捉えたとき、音楽がきっとその役に立つと考えています。
リリムジカでは自分たちの活動を「音楽療法」ではなく「ミュージックファシリテーション」と呼んでいます。
創業から3年ほど経った頃、あるひとつのきっかけからこの言葉を使うようになりました。グループホームでプログラムに参加してくださっていた方で、初めてお会いしたときにはおしゃべり好きで明るい印象の認知症のある女性がいらっしゃいました。その方は時間が経つにつれて表情が動きづらくなり、言葉でのコミュニケーションも難しくなっていきました。
そんな中、冬の寒い時期に『かあさんの歌』を歌いました。前に大きく出した歌詞をグループホームの職員の方が指差していくのですが、その方は歌詞をしっかりとご覧になり、「母さんが夜なべをして」の一節を声に出して歌い、ほろっと涙を流されました。
それをご覧になった職員の方が、プログラムが終わった後で教えてくださいました。
「あの方は認知症が進行され、歌詞を読んだり、声を出して歌ったりするのはもう難しいんじゃないかと思っていました。でも、会話は難しくても歌詞を読んで歌って涙するというお力がありました。自分の中にあった、できないんじゃないかという思い込みに気づかされました」
ご本人様の変化が大切なのはもちろんのこと、さらにそれを職員の方やご家族の方、周囲の方々と共有して、一緒に「◯◯さんはこういう事ができるんですね、こういう一面があるんですね」と喜びを分かち合う。できない部分ではなく、できることやポジティブな部分、その人らしい部分に焦点をあてる。「提供する側」と「享受する側」ではなく、ひとりの人間同士として時間・空間を共にし、相手を理解する。そういったことを実現していくのが、私たちの役目なのだと思うようになりました。
介護を必要とする人が安心して毎日を過ごせる環境とは、このようなまなざしに溢れる環境のことで、それをつくり続けていくことこそ「ケア」なのではないでしょうか。
そんな風に考える私たちの仕事について、「療法」という言葉よりも「場づくり」に思えるとご意見をいただいたことがきっかけで、場づくり=ファシリテーションという発想が生まれました。
「障害は人ではなく社会の側にある」という考え方が広まりつつある中で、私たちは介護を必要とする人が安心して主体的に居られる場と、ご本人のポジティブな部分を見つめるまなざしを周囲の方々と一緒につくり続けてまいります。
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